「年内に工事を終わらせたい」
11月になると、こうしたお客様からの相談が増えます。
しかし、注文が増えても利益が残るとは限りません。
【注意】12月の注文を待っている間に、年内に工事を終えられる日数は減っていきます。
年末の利益を守るには、11月初旬の判断が重要です。
11月初旬に決まる、年末受注の勝敗と粗利の分岐点を知っておきましょう。
忙しいのに利益が残らない理由
私は建築業を含む78業種の経営改善を支援してきました。
そこで重視しているのは、売上だけでなく、最後にいくら利益が残るかです。
特に建築業は、私のコンサルティングで100%の成功率を収めてきた得意分野です。
その建築業では、年末は受注が増えるほど、職人の手配や資金繰りが難しくなる場合があります。
忙しさと利益は、別の問題なのです。
お客様の気持ちも、使える時間も、お金も変わります。
「先月はこの金額で契約できた」
「いつもの職人なら対応できる」
そうした過去の経験も、今の条件で通用するとは限りません。
事実を確認せずに受注すると、値引きや追加費用で利益が減ってしまいます。
12月の利益は11月に決まる
年末の受注で見るべきものは、注文数だけではありません。
お客様がいつまでに工事を終えたいのか。
自社はいつまでに契約すれば間に合うのか。
その工事でいくら利益が残るのか。
この3つを別々に考えることが、年末の落とし穴です。
11月初旬のうちに、次の3つの問題を確認する必要があります。
1つ目:お客様の焦りを待つ罠
お客様は、最初から年内工事を急いでいるとは限りません。
年末が近づくにつれ、「間に合わないかもしれない」という不安が強くなることがあります。
その段階で初めて相談を受けると、比較検討や値引き交渉に時間を取られます。
重要なのは、お客様が不安になる前に、判断に必要な情報を届けることです。
2つ目:空いている工程を売る罠
工事の日程が空いていても、利益が出るとは限りません。
職人の予定、材料の入荷、天候によって、工事に必要な日数は変わります。
契約後に無理な日程を組めば、施主様への引き渡しが遅れるだけでなく、追加費用も発生します。
売るべきなのは空き日程ではなく、無理なく完工できる施工枠です。
3つ目:売上だけで安心する罠
100万円の工事でも、原価が70万円なら粗利は30万円です。
そこから値引きや追加の外注費が発生すれば、粗利30%は守れません。
さらに、材料代の支払いが先で、入金が後なら資金繰りも厳しくなります。
契約金額だけでなく、工事原価と入金時期まで見ることが重要です。
建築業3社に見る利益を守る視点
私が支援した建築業の事例をご紹介します。
それぞれ取り組みは違いますが、共通するのは、目の前の注文を追うのではなく、受注につながる条件を見直したことです。
事例1:S設計事務所様の顧客心理
設計の良さが伝わらず、価格で比べられていたS設計事務所様。お客様が何を不安に感じ、何を知りたいのかを見直したことで、集客と受注の流れが変わりました。
Before:設計力に自信があっても、価格競争で苦戦。
After:お客様の不安に合わせた情報発信に変更。
具体的な変化:他社を断って見学会に来るお客様が現れました。
結果:価格以外の理由で選ばれる流れが生まれました。
事例2:K工務店様の施工枠
現場の仕事が忙しく、新しいお客様を集める時間が足りなかったK工務店様。工事中の現場をお客様との接点に変え、年末の受注を早い時期から確保できる流れをつくりました。
Before:新しいお客様を集める時間が不足。
After:現場での接点を受注につなげる仕組みに変更。
具体的な変化:10月中に年内リフォーム枠を予約完売。
結果:12月の注文を待たずに施工予定を確保できました。
事例3:外壁塗装業の粗利確保
年末の工事では、契約を急ぐほど値引きに応じやすくなります。この外壁塗装業では、年内に施工できる期限を明確にすることで、価格を下げずに選ばれる条件をつくりました。
Before:年末の工事で価格比較に巻き込まれる問題。
After:年内施工可能な期限を事前に提示。
具体的な変化:相見積もりなしで契約が成立。
結果:平均粗利35%を維持できました。
まとめ
年末の利益は、12月に何件受注したかだけでは決まりません。
お客様の不安、工事に使える時間、資金の動きは、すべて変わるものです。
その事実を受け入れ、利益が残る条件から逆算して仕組みを設計する。
これが私の『V字回復メソッド』の考え方です。
11月初旬の今、自社の受注と工程を見直すことが、年末の利益を守る第一歩になります。
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【編集後記】
私の実家は電気工事店でした。
昔は、建築業や住宅関係の会社に、今より活気があった時代もありました。
それでも、昔も今も「仕事はあるのに、お金が残らない」という悩みを抱える経営者様がいらっしゃいます。
仕事があるのは良いことです。しかし、受注が決まった時点では、まだ利益が確定したわけではありません。
工事が始まれば、材料費も職人の予定も変わります。天候によって工期が延びることもあります。
だから私は、売上の話を聞いたときほど、最後にいくら利益が残るのかを確認します。
特に年末は、時間が足りなくなることで、普段なら避けられる費用まで発生しやすい時期です。
今年の年末は、どの工事を、いつまでに、いくらの利益を残して受けるのか。
その判断を11月初旬にできるかどうかが重要です。
注文をすべて受けることが、必ずしも会社を守ることにはなりません。
利益が残る仕事を選べる状態をつくること。
そのために、今ある事実を一つずつ確認していただきたいと思います。
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